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「家庭の医学」より抜粋… ++原因と症状++(原因) 気管支ぜんそくの原因はさまざまですが、共通した特徴は、気道がいろいろな刺激に対して敏感になっていて、たやすく収縮をおこしたり、分泌物が多くなったり、浮腫を生じたりして、気管支の内腔が狭くなってしまうことです。 気道が閉塞しやすい状態にあると、ふつうでは反応をおこさない刺激に対しても、ぜんそく発作が出現します。この刺激に対して気道が過敏に反応する体質は、遺伝と深いかかわりがあるといわれています。 以下ぜんそくがおこる理由を個別にみていきます。 (1)アレルギー 人は、異物が体内に吸収されると、その異物(たとえば、室内塵や花粉)が抗原となり、それに対して抗体をつくります。次に再び同じ抗原が入ると、抗原と抗体との反応により強い症状をもたらします。これをアレルギー(抗原抗体反応)といいます。 ぜんそくでは、抗原が体内に入り抗体(IgE抗体)ができた後、再び抗原に出合うと抗原抗体反応をおこし、気道の組織にある肥満細胞や好酸球という物質から気管支を収縮させるヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどの物質が出て、気道が閉塞に向かうと考えられます。 (2)感染 感染をおこすと、気管支の表面の細胞が障害され、気管支を収縮させる神経の刺激受容体が露出されるため、冷気や刺激性ガス、汚染物質などによって、たやすく、収縮をおこします。 また、細菌自身が抗原となって、アレルギーをおこすことにもなるわけです。 (3)自律神経失調 一般に、気道の拡張には交感神経がはたらき、収縮には副交感神経(迷走神経)がはたらいています。これらは、意思とは関係なくはたらくもので自律神経と呼ばれています。 ぜんそくの人は、副交感神経系の活動を調節するアセチルコリン受容体が過敏になり、交感神経系では、活動を調節するβ2‐アドレナリン受容体の機能が逆に低下しているために、気道が閉塞しやすい体質になっていると考えられています。 (4)精神的要因、運動、気象変化 不安や葛藤など精神的ストレスは、ぜんそく症状を悪化させる誘因となります。また、はげしい運動は発作を誘発させたり、症状の悪化をもたらします。小児によくみられる運動誘発ぜんそくが代表的なものです。理由は不明ですが、気象変化でも、悪化をもたらします。 ぜんそくは、秋に悪化する例が多くみられますが、台風前や梅雨時にも、しばしば発作がおこることがあります。 (5)その他、薬剤、食物など 消炎・解熱・鎮痛薬などの薬剤(アスピリン、インドメタシンなど)や食物、防腐剤、着色料でも、ぜんそく発作をおこすことがありますが、内分泌ホルモンの機能異常なども原因となります。このようにぜんそくの原因はさまざまで、それらが、おたがいに複雑にかかわりあいながら発症すると考えられています。 喘鳴(呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューする)と呼吸困難が主症状ですが、発作は夜中から明け方に多くみられます。悪化すると、聴診器なしでも喘鳴が聞かれるようになり、横になると息苦しさが増すため、前かがみに座った姿勢で呼吸(起坐呼吸)するようになります。 せきやたんをともなわない場合もありますが、せきだけが多発することもあります。ぜんそくの多くは、息を吐くときに苦しい(呼気性呼吸困難)のですが、吸気時に、呼吸困難を示す人もかなりみられます。 強い呼吸困難がつづいたり、口唇や爪が青紫色になるチアノーゼが出現するようになると、重積発作状態と呼ばれ、すみやかに適切な処置が必要とされます。 ++治療と予防++ ぜんそくの治療は、2つの方法で行ないます。1つは、対症療法で、気管支が急に狭くなって胸がゼーゼー、ヒューヒューし、たんが詰まり呼吸困難をおこした発作時に行ないます。もう1つは、ふだん発作がみられないときに行なう原因療法で、できるだけ再発作をおこさないようにするための治療です。 (対症療法) (1)発作時の治療 ぜんそく発作時の治療は、けいれんで狭くなった気管支を拡張させ、浮腫をとり、たんを出やすくすることです。 軽い発作では気管支拡張薬として、交感神経β2刺激薬(サルブタモール、フェノテロール、プロカテロール、ツロブテロール)の内服や吸入とともに、テオフィリン系薬剤のアミノフィリン、キサンチン誘導体のテオフィリンの併用内服はより有効です。 これらの方法で改善が得られないときには、エピネフリンの皮下注射やアミノフィリンの静脈注射を行ないます。それでも安定しない場合は、副腎皮質ステロイド薬の内服または静脈注射が必要となります。副腎皮質ステロイド薬は気管支の浮腫にきわめて有効で発作をやわらげます。 重い発作の場合は、発作のために水分摂取量が少なくなるうえに、発汗や呼吸数がふえますので、脱水状態になりやすくなります。脱水状態では、薬が効きにくくなったり、たんが出にくくなります。それを防ぐために、アミノフィリンや副腎皮質ステロイド薬の使用とともに、点滴注射が行なわれます。 また呼吸困難が強い場合は、必要に応じて酸素吸入を併用することもあります。感染が悪化の原因となっている場合には抗生物質があわせて使用されます。 重い発作でも呼吸困難が24時間以上つづくような場合を重積発作状態といいます。このようなときには、これまで述べてきた治療とともに、水分を十分与えるため持続して点滴を行ないます。 重症化すると気管内に気管チューブを挿入して窒息を防いだり、人工呼吸器による治療が必要となることがあります。 (2)発作がおさまっているときの治療 安定時には、発作を予防したり、なるべく発作を軽くさせるために、ふつう気管支拡張薬の内服、吸入が行なわれます。長時間効果の持続する徐放性テオフィリン薬の内服や交感神経刺激薬の内服、吸入が有効です。 また、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)の吸入も行なわれますが、とくにせきが主体のぜんそくや肺気腫、慢性気管支炎を合併している場合に有効です。 さらに、ぜんそくの予防薬として抗アレルギー薬を吸入したり内服したりします。この薬剤は化学伝達物質遊離抑制薬ともいわれ、先に述べた肥満細胞や好酸球からの気管支を収縮させるヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質の放出を防いで発作を予防します。すでにおこっている発作には効きませんが、上手に使用すると発作が軽減します。 抗アレルギー吸入薬はすみやかに効果が現われますが、内服薬では、効果が現われるまで一般に4〜8週間かかります。副腎皮質ステロイド薬の内服は、発作をしずめるのがむずかしい人に用いますが、副作用が強いので、必要最小限の使用にとどめることが大切です。このため副作用の少ない副腎皮質ステロイド薬の吸入療法がすすめられます。 (3)吸入療法 吸入は、内服に比べて、(a)少量で効果が得られる、(b)速効性がある、(c)全身的副作用が少ない、などの利点があります。ぜんそくには、気管支拡張薬(交感神経β2刺激薬、抗コリン薬)、副腎皮質ステロイド薬、抗アレルギー薬などが使用されます。 吸入方法としては、超音波ネブライザーやモーターネブライザーなどがあります。ハンドネブライザーは一定量が吸入でき簡便なため、適切に使用すればひじょうによい治療法といえます。 (原因療法) ぜんそくは、対症療法だけでは十分な治療効果が得られないことが多いため、対症療法とともにぜんそくの根治的治療法として特異的減感作療法や非特異的減感作療法が行なわれています。 (1)特異的減感作療法(免疫療法) ぜんそくの原因となっている抗原が明らかな場合には、ごく少量の(発作を誘発しない程度の量)原因抗原エキスの注射を徐々に増量しながらくり返し、その抗原に対する抵抗力をつけるという療法です。室内塵や花粉抗原がおもに用いられ、70〜80パーセントの有効率があるといわれています。 副作用としては、ごくまれに注射後20分以内に、ぜんそく発作の誘発や血液循環障害、呼吸困難などをきたすアナフィラキシーショックなどがおこることがあります。 (2)非特異的減感作療法(変調療法) ぜんそくの原因抗原が明らかになっている、いないにかかわらず実施することができ、症例により効果が認められることがあります。 そのうちヒスタグロビン療法は、ヒスタミンにY‐グロブリンを加えたヒスタグロビンという薬を、定期的に皮下に注射し行ないます。 また金療法は、金製剤を定期的に筋肉注射する方法です。ほかの治療法で効果が得られない場合に試みられますが、副作用として皮疹、腎障害、肝障害をきたすことがあるので、注意して行なう必要があります。 このほかにも、局所刺激により気管支の緊張をやわらげることを目的とした、アストレメヂン、パスパートやブロンカスマ・ベルナなどの細菌ワクチン、また臍帯や胎盤を移植する組織療法などが行なわれることがあります。 (3)心身の鍛錬 からだをきたえることによって、自律神経のバランスを安定させたり、呼吸能力の改善をはかることは、ぜんそくではひじょうに大切です。 皮膚の鍛錬として薄着や乾布摩擦、冷水摩擦などは、かぜの予防としても有効です。また適度の運動は、体力増進とともに呼吸筋の鍛錬としても重要ですが、とくに水泳は運動誘発ぜんそくがおこりにくいと考えられているため、ぜんそく患者には適しています。また、ぜんそく体操は腹式呼吸を習得するためにも、積極的に練習されることが望まれます。 精神的な緊張やストレスでも、ぜんそく発作はおこりやすくなるため、できるだけ精神の安定を保つことが大切です。そのために、心身医学的療法なども行なわれます。 |