ちょっとお勉強 ケトン食療法                    

「月刊 波 1998年1月号」より抜粋…

<ケトン食療法>
 脂肪摂取を主体とした食事療法で、食事摂取中のたんぱく(P)、炭水化物(C)、脂肪(F)の重量をとり、かつ体内にケトン体産生に働く物質K(向ケトン物質)、ケ トン体産生阻止に働く物質AK(反ケトン物質)とすると、
    
          K    0.9F+0.46P
ケトン指数=---=--------------(重量比)
         AK   C+0.1F+0.58P
で表される。
このケトン食療法は1921年Wilderによって始められたが、その後Keith,Livingstonらにより難治性てんかんに対する有効性が認められている。1971年、Hultenlockerらは従来のケトン性の強い中鎖脂肪酸(MCT)を使用することにより、食事摂取の内容特に炭水化物摂取の強い制限が緩和された。
 
<ケトン食療法の実際>
 ケトン食療法はWilderの提唱した従来のケトン食とMCT使用ケトン食が主なものであり、その概略を表1に示す。いずれの療法にも飢餓期間の後にケトン食に入る場合とケトン指数の低い1:1より2:1と一定期間で順次、高脂肪食に移行させる場合があるが、前者の方が効果の有無、判定がより早期に可能である。
 飢餓期間を設ける場合は4+のケトン尿が生じるまでおよそ48〜72時間の絶食を行う。ケトン指数が高いほど高脂肪食となるが、たんぱくおよびカロリー摂取は成長に必要なレベルで、たんぱくは1g/kg/日以上とし、MCT食では1.5〜g/kg/日を目標とする。
 食事の甘味はサッカリンを使用。MCT油を使用したMCT食の方が向ケトン性能力がより強力であるため摂取がより容易な食事内容となる。
 乳幼児の難治性てんかんの治療用特殊ミルクとして明治乳業のケトンフォーミュラがある。このケトン乳を12%濃度に溶解すると、単一調乳ケトン指数2.92のケトン食を乳児に投与することができる。年長児にもこのケトン乳をアイスクリーム、スープ類などの食事処方に応用することができる。
 入院期間内に保育者(主に母親)は栄養師の指導をうけ、ケトン食の作り方をマスターし、約1ヶ月の入院の後、自宅で療法を続ける。効果判定のため少なくとも数ヶ月は食事療法を続けるが、ケトン食摂取により、まれにてんかん発作が増加して短期にケトン食療法を中止せざるをえない場合がある。
 有効な場合は2年間続行し、普通食に戻す。しかし、ケトン食療法を中止するとてんかん発作が再発、増悪することが予想される場合はこの限りではない。学校、幼稚園の給食は食べられないため献立表の昼の分を弁当として持参させ、また、ケトン食の献立以外のもののつまみ食い防止に心がけることが必要となる

<ケトン食療法の注意点>
 ケトン食療法を施行するにあたり、飢餓、ケトン食療法期間を通じて、体重測定、てんかん発作の観察をして脳波検査、血中および尿中ケトン体測定、血中ガス分析、血中電解質、血液一般検査、血糖値、血液生化学、内分泌検査、内服中の抗てんかん薬血中濃度測定などの検査を定期的に行って、安定した効果が得られるよう、また副作用防止のため十分な管理をする。
 乳幼児では飢餓中、ケトン食開始期間中は低血糖または重度のケトン血症になりうることがあるので入院観察を原則とする。自宅でケトン食療法を持続する期間中は尿ケトン体をチェックして、ケトン尿=〜=に保つことが肝要である。
 その他の注意点としては薬物投与での糖入り(シロップ、糖衣錠など)はさけて必要な抗てんかん薬は糖含有量の少ない剤型を選べる。風邪薬、抗生剤など倍散の薬剤や賦形剤に乳糖やでんぷんを多量に含んでいるものがあるので、注意が必要である。飢餓時には、抗てんかん薬血中濃度の上昇がみられることがある。

<副作用>
 副作用としては下痢症、低血糖、高尿酸血症、低カルシウム血症、腎尿管結石、易感染性などがある。

<適応>
 @焦点発作を除くあらゆるタイプの難治性てんかん
 A発作の抑制により知能発達または渦動性行動異常改善の見込みのあるもの
 B患者、両親、家族が治療に対して協力的である
 ことなどがあげられ、ケトン食療法施行の適応年齢は一般的には1〜7歳である。

<臨床効果>
 ケトン食療法開始後より効果を継時的にみると、飢餓期間中の発作消失が約50〜70%で、有効例が最も多く、ケトン食継続中、効果が減少する。発作消失が1ヶ月未満の症例が20〜30%という報告が多いようである。効果が遅く出現することもあるので、効果判定には少なくとも4ヶ月間ケトン食療法を続行する必要がある。従来のケトン食とMCT使用ケトン食の臨床効果の比較ではMCT食(ケトン指数3:1)は従来食(ケトン指数4:1)とほぼ同等の効果を示すが、MCT食(ケトン指数2:1)に比べ臨床効果はやや劣る。また、ケトン食療法は抗てんかん作用と同時に鎮静効果を示し多動などの行動が改善されることがある。


  表1 ケトン食療法の実際

種類

従来のケトン食療法

MCTケトン食療法

飢餓期間

    3〜7日       なし     2〜3日          なし      

ケトン食

    ↓        ケトン指数
    ↓          1:1      
    ↓           ↓…1〜2週間隔
    ↓          2:1  
    ↓           ↓…1〜2週間隔
    ↓          3:1  
    ↓           ↓…1〜2週間隔
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
         ↓
     ケトン指数
      4:1(2〜6ヶ月)
       ↓
      3:1(1年〜1年8ヶ月)
       ↓
      2:1(2〜6ヶ月)
     ↓        ケトン指数
     ↓         1:1      
     ↓          ↓…3〜7日間隔
     ↓         2:1
     ↓          ↓
     ↓          ↓
     ↓          ↓
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・
            ↓
        ケトン指数
         3:1
          ↓
         2:1
          ↓
         1:1

その他

水分量60〜89ml/kg/日
カロリー60〜80cal/kg/日
}
たんぱく1g/kg/日以上

幼少児ほど多めのカロリー量とする

カロリー60〜90cal/kg/日
たんぱく1.5〜2.0g/kg/日
MCT量は総カロリーの40〜50%とする

   

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